先進 集落営農法人の取組みについて②

みなさん、こんにちは。「新しい農業のカタチづくり」を目指している椴 耕作です。

前回に続き「農事組合法人 ファーム・おだ(以下、ファーム・おだ)」の取組みをご紹介させていただきます。今回は「自治組織の新しい仕組みづくり」について紹介いたします。

従来の地域組織

「ファーム・おだ」が取り組んだ「自治組織の新しい仕組みづくり」の説明の前に「従来の地域組織」を確認しておきましょう。

1つの地域に3つの組織

従来の一般的な地域組織(農業地域)では1 つの地域に3 つの自治組織等が存在します。

①自治会組織

  • その地域の全住⺠が属する組織です。
  • 農業地域特有のものではなく、どこの地域にも存在する組織です。

②農地・水・環境保全向上対策事業

  • 農業地域における環境保全の向上を⾏うための組織です。
  • 農協組合員だけでなく、一部の住⺠(非農業者)も参加しています。

③生産組合

  • 農協の組合員で構成される組織です。
  • 農業地域の場合、ほとんどが農協組合員ですので、⼤多数の住⺠が属することになります。

属している住⺠の重複はありますが、各組織は個別に存在しており内部の会計処理も組織ごとに管理されています。


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従来の地域作業

地域内の住⺠同⼠で協⼒して「公共の場所(公園やため池など)の草刈り作業」をしなければならない場合を想定してみましょう。従来の地域組織では①②③の役員で「いつ草刈りをするか」話し合われ、一般的に年に数回、⽇曜⽇が作業⽇となります。

草刈りといった地域作業は、最低でも一世帯から1 人は参加協⼒しなければなりません。

仮に3 世代同居のご家庭であれば、子が幼いうちであればまだ元気な祖⽗⺟が草刈り作業に参加できますが、子が中学⽣・⾼校⽣になる頃には親世代が草刈りに⾏かなければなりません。しかし⽇曜⽇となれば、中体連・⾼体連などの⾏事と重なる場合があり、親世代はジレンマを抱えることになります。

自治組織の新しい仕組み

小田地区の地域づくり活動では、2 階建ての推進体制から成り⽴っています。

まず1 階部分には13 集落からなる全住⺠参加の自治組織「共和の郷・おだ」が設⽴されています。「自らのことは自らやろう。できないことは意⾒を一つにまとめて提案・提⾔をしよう」という趣旨から、2003 年に設⽴されました。組織機構が役場に似ているため「小さな役場」と呼ばれており、前述の①②③がこの自治組織に含まれるイメージです。

次に2 階部分には、「小さな農協」の農業部門という位置づけで農事組合法人である「ファーム・おだ」が存在します。「ファーム・おだ」以外にも各種の経済活動を担う様々な組織(ボランティア団体など)から構成されております。自治組織の運営経費は、各⼾から年間 3,500 円ずつ会費を集めて、補助⾦とあわせた予算 300 万円で全ての活動をしています。(出所︓JA 総合営農研究会第37 回公開研究会)

この仕組みの⼤きなポイントは1 階部分と 2 階部分が連携できているところです。

一⾒すると「ファーム・おだ」の取り組みではなく、小田地区の取り組みのように感じますが、この2 階建てを考案したのは「ファーム・おだ」設⽴時の⽴役者である初代組合長の吉弘昌昭さんと聞き及んでいます。(出所︓2018年 集団営農法人化研修)

新しい自治組織で地域作業はどう変わるのか

前述の「従来の地域作業」ではジレンマを抱えていましたが、小田地区のように1 階部分と2 階部分が連携することで、そのジレンマを解消することができます。

その理由は、①②③から要請された草刈り作業を「1 階部分に属する執⾏部(いわゆる役員)」が一旦受け付け、2 階部分の「ボランティア団体」や「ファーム・おだ」等の団体に順番で割り振るためです。例えば、今回の草刈りを「ファーム・おだ」に依頼すれば、地域住⺠全体へ草刈りの要請をしなくて済みます。

草刈りの依頼を受けた団体は、その団体の中で話し合って、都合のいい⽇を決めたり、1⽇あたりの作業時間を減らして数⽇間にわたり作業を⾏うなど臨機応変に対応できるため、⼼理的・体⼒的な負担をかなり軽減できるはずです。


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このように団体ごとに作業が割り振られるため、従来の方法では子どもの応援に⾏けなかった人も、気兼ねなく応援に駆けつけることができます。

作業を割り振られた団体の中で、子どもの⾏事参加を優先してもらえたという実績があれば「返報性の原理(相手から受けた好意に対しお礼をしたいと感じる⼼理)」から次回の草刈りには喜んで参加してくれるはずです。「地域活動に参加しやすい体制づくり」を視野に入れ、地区全体を巻き込んだ仕組みづくりは、まさに画期的と⾔えるでしょう。

次回予告

いかがでしたか︖ 活気溢れる町づくりへのすばらしい取組みですよね。しかし、「ファーム・おだ」は、まだまだ進化しています。次回も引き続き「ファーム・おだ」を特集いたします。

次回は、農業収入が上がること間違いナシ︕の「⽣産体制を効率化した農業」にフォーカスします。


農事組合法人 ファーム・おだ さんのWEBサイト→https://farm-oda.com/


執筆者:椴 耕作(だん こうさく)

従事者の高齢化等で存続が危ぶまれる「地域の"農"の活性化」をモットーに、「新しい農業のカタチづくり」を目指す農業経営アドバイザー。活動の一環としてMANDY WORKSで農業や地方創生に関するコラムを発信中!

【資格・所属等】
CFP、宅地建物取引主任者、農業経営アドバイザー、農業簿記検定1級、NIE.E指導委員

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