先進 集落営農法人の取組みについて①

みなさん、こんにちは。「新しい農業のカタチづくり」を目指している椴 耕作です。

今回は、中山間地で見事に集団営農の法人化を成し遂げられた「農事組合法人 ファーム・おだ」さんの取組みについて、スポットを当ててみたいと思います。たくさんの取組みをしておられるため、4回に分けてお届けします。

"先進的な集落営農法人:農事組合法人 ファーム・おだ" とは…

「農事組合法人 ファーム・おだ」さんは、中山間地である広島県の東広島市河内町小田地区にあり、13集落の農家の9割以上である151戸(現在は、152戸)を構成員とし、2005年に設立された集落営農法人です。

設立のきっかけになったのは、「このままでは、集落がなくなってしまう!」という強い危機感からでした。

小田地区では、地域を持続させるため13集落の自治組織「共和の郷・おだ」を最初に誕生させます。その農業部門という位置づけで設立されたのが、「農事組合法人 ファーム・おだ」になります。

日本各地においても、農業の担い手の高齢化問題等については共通の課題として、地域の農業を守るためにいろいろな方法が模索されています。

地域の人々が協力して集団で農地を耕作していく任意組合である「集落営農」というやり方もその一つです。

「集落営農」の立上げ時において、行政は「補助金を出します」等のアナウンスを行っていたため、ともすれば「補助金」目当ての、名ばかりの「集落営農」組織になっているところも多いと言われています。

「集落営農法人」設立にいたっても、利益が出せるしくみづくり等を深く検討することもなく、「補助金」ありきで設立しているところも少なからずあると聞き及んでいます。

でも、「農事組合法人 ファーム・おだ」さんは違いました。

「地域農業リーダー養成講座」の開催!

これから地域を守っていくためにも、まず「人づくり」。

地域を担っていく「リーダーの育成」が最も重要であるものと位置づけました。

各地域から最低3名の次世代地域農業リーダーの参加を要請し、県等と協力して、約5ヵ月にわたり、実務に直結する研修を開催しました。

研修終了時には「修了証」を授与し、地域へ戻り、その「修了証」を周りの人に見せることにより、研修で学んだことを即実践しやすいしくみづくりも行いました。

ただ、この次世代地域農業リーダー養成講座の参加要請を行うにあたり、その裏側には、単なる養成講座への参加を募ることだけにとどまらない、地域ならではの解決を図る手法が隠されていたのです。

地域の「合意形成」の出発点…?!

地域には、昔から地域に対して強力な影響力を持つリーダーが少なからずいます。

いわば、親分的存在です。

その強力な影響力を持つリーダーの意見には、よっぽどのこと(明らかな間違い等)がない限り、地域の人々は従うことになります。

特に、新しい何かをやり始める場合、いかにこの強力な影響力を持つリーダーの了解を得られるかが “肝” になります。

いわば、地域の「合意形成」の出発点です。

そこで、次世代地域農業リーダー養成講座を始めるにあたり、まず、地域に対して強力な影響力を持つリーダー(以下、「Aさん」という)へ一番に話を持ち掛けます。

「今度、次世代地域農業リーダー養成講座を始めますが、Aさん、参加しませんか。」

◆パターン①(賛成の場合)

「今後の地域のことを考えると、次世代のリーダーを養成する講座の開催は確かにいいことだ。でも、俺はもう年なので、私の代わりに若いBさんを参加させてくれ。」

こうなると、Aさんは、今後のリーダーにBさんを選んだことになり、今後の新しい地域づくり等をBさんが中心となって行っていくことを了承したことになります。

◆パターン②(反対の場合)

「今でも、何とかできているんだから、今後も特別な次世代リーダー研修等をしなくてもやっていけるはず。第一忙しいので、研修等を受ける暇はない。」

こうなると、地域のほとんどの人が賛成していても、Aさんが反対なので、先に進めなくなると考えてしまいそうです。

でも、「農事組合法人 ファーム・おだ」設立の立役者の考え方は違いました。

「2-6-2の法則」と考えれば…?!

パターン②の場合、「農事組合法人 ファーム・おだ」設立の立役者はこう考えました。

「2-6-2の法則」と考えればいい。この法則からいけば、2割の人は、とても賛成してくれる人。6割の人は、なんとなく賛成でもいい人。残り2割の人は、必ず反対する人。

Aさんは、残り2割の必ず反対する人の一人だと思ったらいい。

Aさんには、一番最初に話を持ち掛け、Aさんの立場を考慮した手順はしっかり踏んでいる。

Aさんに反対されたとしても、今後のこの地域を守っていくにあたって、地域のほとんどの人が必ず必要な研修として研修開催を望んでいるものだから、研修参加者の人選に当たっては、地域の人々で話し合って決めてもらおう。

そして、この研修には、その選ばれたリーダーに参加してもらおう。

その後、反対したAさん(残り2割の必ず反対する人)には、地域の今後のために開催したことを理解いただくよう、説明し続ければよい。

いかがですか。

数年前、とある研修でこの話をお聞きした時、「こんなやり方があったのか、すごい!」の一言でした。

強力な地域のリーダーに反対されると、「そこから先には進めない。どうやったらあのリーダーを納得させることができるのだろうか…?」とリーダーを納得させることばかり考えてしまっていたのですが、「2-6-2の法則」は、まさに「目から鱗」でした。

「農事組合法人 ファーム・おだ」設立の立役者のこの考え方、今から何かを始めようとしている人にとって、大変な勇気をいただいている気がします。

次回予告

「農事組合法人ファーム・おだ」さんは、他にも地区全体を巻き込み、地域住民の皆さんが地域活動に参加しやすくなる「2階建て方式」という仕組みも実現されています。

「2階建て方式」の詳細が気になりますよね?

次回は、その画期的な取組みを紹介いたします!


農事組合法人 ファーム・おだ さんのWEBサイト → https://farm-oda.com/


執筆者:椴 耕作(だん こうさく)

従事者の高齢化等で存続が危ぶまれる「地域の"農"の活性化」をモットーに、「新しい農業のカタチづくり」を目指す農業経営アドバイザー。活動の一環としてMANDY WORKSで農業や地方創生に関するコラムを発信中!

【資格・所属等】
CFP、宅地建物取引主任者、農業経営アドバイザー、農業簿記検定1級、NIE.E指導委員

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